詩集を通じて詩人ヴェルレーヌ(Paul Verlaine,1844-1896)が自己をいかに明確にしていったのか。『土星びとの歌』(1866)から『叡智』(1880)までを仔細に考察する。
その後ヴェルレーヌは、マチルドという詩のミューズとの出会いによって、『よき歌』を創作する。そこでは、「恋愛詩」特有の、型にはまった表現内容の下に、マチルドを愛しながらも、彼女の「肉体」を求める願望と、自分だけの「救い」を求めるエゴイスムが潜んでいた。その結果、この詩集は、彼の実生活に直接結びついた、没個性どころか、実に個性的な詩集となった。彼はこの詩集をもって、高踏派と完全に断絶したと言えるであろう。(「結論」より)
著者:大熊薫(おおくま・かおる)
1949年福岡県生まれ。九州大学文学部卒、同大学大学院文学研究科博士課程中退。1981年より1年間、パリ・ドミニコ会修道院にてカトリック研究。現在、熊本大学文学部文学科教授。専門はヴェルレーヌ。共訳書に『イエスと歩む福音宣教の旅』(ドン・ボスコ社、1987年)がある。