モンマルトルの退廃と喧噪から逃げ出すようにして、パリから南に下った郊外の町アルクイユにエリック・サティ(Erik Satie, 1866-1925)の構えた転居「四本煙突の家」。パリーアルクイユの隔たりは、一九世紀ロマン主義に浸るこの作曲家に未知の楽想をもたらす。サティ研究の第一人者である著者が、貴重な未発表資料や証言をもとに、パリアルクイユ時代の郊外人サティの人物像を浮き彫りにする。
フランス語の郊外「バンリユ」は、語源的には「追放された土地」という意味であり、したがってサティの転居は自発的疎外だったのだ。この決断がなかったら、モンマルトル文化の栄光と退廃を経験した音楽家にとって、第一次大戦後の華々しいカムバックもありえなかったに違いない。(「エリック・サティと郊外」より)
著者:オルネラ・ヴォルタ(Ornella Volta)
1927年トリエステ生まれ。小説・神秘主義に関する著作を発表.1970年代以降はエリック・サティ研究に傾倒。サティの研究書、目録など多くを手がける。エリック・サティ協会の創設者でもある。現代画家ピエール・アレシャンスキー・サックス奏者のスティーヴ・レイシーなど幅広い交流を持つ。
訳者:昼間賢(ひるま・けん)
1971年埼玉県生まれ。パリ・ソルボンヌ大学DEA取得、早稲田大学大学院博士課程修了。現在早稲田大学非常勤講師。専門は、フランス両大戦間文学文化。パリ第4大学にてアントワーヌ・コンパニョンに師事(1998-2003年)。現在早稲田大学非常勤講師。主な論文に「Proust, acousticien des lettres」(2000)、「フランス郊外文学序説」(2003)がある。他に『ローカル・ミュージック—音楽の現地へ 』(インスクリプト、2005)の著作がある。